仮想通貨の世界において「クジラ」と呼ばれる用語があります。
もしかしたらテレビのニュースやYouTube等で見聞きしたことがあるかもしれません。一体「クジラ」とはなんなのでしょうか。下記で詳しく解説していきます。
仮想通貨やビットコイン(BTC)における「クジラ」とは?

世の中には大量のビットコインや仮想通貨を保有する投資家たちが存在します。
彼らが大きな売りに走ることで相場に大きな影響を与えることがあります。そうしたことから、彼らは大きな存在を揶揄する言葉として、「クジラ(ホエールズ)」と俗に呼ばれています。
そのクジラに該当する1000人の人たちが、ビットコインの総発行数量の40%を保有しているとも言われています。
クジラがビットコインや仮想通貨市場に及ぼす影響

2017年11月12日、某取引所で1億5900万ドル(約180億円)に相当する、およそ2万5000ビットコインが何者かによって、移動がおこなわれました。そしてこの情報はネット掲示板に投稿され、多くの投資家たちの間で「クジラ」がビットコインを売却しているのでは無いかという憶測が飛び交いました。
また2018年3月7日、「マウントゴックス」の破産管財人が約382億円分のビットコインおよび約47億円分のビットコインキャッシュを売却していることが判明しています。管財人は、売却後も16万BTC(2000億円相当)ものビットコインを保有していたようですが、残りの分についてはできる限り高価格での売却に努めたと説明しています。
いずれにせよ、「クジラ」は市場を動かす力を持っており、市場を襲ってくることは否めないため、クジラの動きには着目していくべきでしょう。
クジラ同士は仲間?繋がっている?

相場に影響を与えかねないクジラですが、彼らのようなビットコインや仮想通貨の大口保有者は、ビットコインがまだ注目される前、価値がまだなかった時代からコミュニティを形成していたケースが多いようです。
マルチコイン・キャピタルのカイル・サマニ氏は「お互いに連絡を取り合えるような大口保有者はおそらく数百人はいるだろう。おそらく、すでにそうしているだろう」と述べています。
談合は法律的に問題ないのか?と疑問に思う方もいるでしょう。ロス&シュルガの証券担当弁護士ゲーリー・ロス氏はその理由として『許容される程度までの情報共有が違法ではないこと』を挙げている上、下記のようにも述べています。
「ビットコインはデジタル通貨であり、証券ではありません。よって、あるグループが取引で数分の間に協力して市場価格を押し上げることにも、引き下げることにも違法性はないのです。」
また2011年にまだ1BTC=1ドルの時点で、ビットコインの投資を行っていたBitcoin.comのCEO、ロジャー・バー氏は「自らの資金をどのように使おうが個人の自由なはずだ。しかし個人的にはそのようなことに時間を使ったことはない」と述べています。
BlockTower Capitalの共同創業者のアリ・ポール氏は「どのような資産クラス(株やその他証券)であっても大口投資家約款投資家は談合して多かれ少なかれ価格操作をすることができますし、実際しています。仮想通貨では、その市場の未発展さ、そして、その資産の投機的性質から価格操作が顕著に現れているのです」と述べています。
クジラが計画・実行すれば、クジラ同士で結託して市場を高騰させることも大幅下落に操作することもできるのです。市場が急落すれば、私たち小口の仮想通貨やビットコイン投資家たちは損失を被りかねません。
クジラへの規制がない現状

しかし、こうしたフェアではない行動は許されるべきなのでしょうか?
しかしながら現状はこうした「クジラ」による価格操縦に関する厳格に取り締まる法案やルールは存在しません。しかし、株取引においてこうした行動は「インサイダー取引」として明確に規制されています。
上場会社または親会社・子会社の役職員や大株主などの会社関係者、および情報受領者(会社関係者から重要事実の伝達を受けた者)が、その会社の株価に重要な影響を与える「重要事実」を知って、その重要事実が公表される前に、特定有価証券等の売買を行うことをいい、金融商品取引法で規制されています。
https://kabu.com/rule/insider_trading.html
ポール氏も述べているように仮想通貨市場はまだ発展段階ですから、株などの証券業に比べるとまだ実用的な価値があるものと認められないのかもしれません。
弁護士のマーティン・マッシュキン氏は「仮想通貨市場に透明性はありません。証券ビジネスでは、全ての関連すべきことは開示されなければなりません。しかし、仮想通貨界隈では明確な開示義務が整っていないため、何が起こっているのかを把握するのは困難を極めるのです」として、現在の仮想通貨市場の正当性を否定しています。
現状確かな価値が認められないとはいえ、今後ますます市場は拡大していく可能性は大きいので、インサイダー取引に関する何らかの規制法案を作成することは必要になってくるかもしれません。G20などの国際会議の場で、世界共通の健全な規制の枠組みを議論することは今後もなされていくでしょう。
市場の発展と、規制やルールはセットでおこなわれるべきなので、今後も注視していきたいところですね。